各ドリルについて(上達への第一歩)

Igeta Ski'll -井桁之スキー術- のドリルには「股関節くりっ」や「骨盤くいっ」などいくつか馴染みのない言葉で各ドリルの名前が付けられています。
複数の複雑な動作に名前を付けることでいくつも動作を意識せずに直感的に動くことができます。

 Igeta Ski'll -井桁之スキー術- では「言葉」の使い方にはこう見えてかなり気を使って選択されております。なるべく「言葉」のニュアンスで動きが想像できるようにしてあります。もちろん説明を受けなければ何のことかわかりませんが、複数の動きを一つの言葉に集約させ「記号化」することで、なるべく意識する動作個数を減らしたいと思っています。

 例えば、足幅を股関節幅にして、中間姿勢をとって立ちます。中心軸上で上下動をします。その上下動の沈み込む時に右股関節を内旋、左股関節を外旋(左くりっ)させます。おへそ・胸の向きは正面に向けたままですよ。そして立ち上がりながら元の中間姿勢に戻してその反対(右くりっ)もさせてみましょう。上半身が左右にぶれたり傾いたり、捻れたりしないよう気を付けましょう。というのが「股関節くりっVer.1」ですが、この動作をその後もいちいちこの様に説明していては言う方も大変ですし、受ける側も考えることが多すぎてわからなくなってしまいますね。最初は細かく説明・指導しますが、それをこれが「股関節くりっVer.1」です!と映像(視覚)的にも定義することで、以降陸上でも雪上でも「股関節くりっVer.1」という言葉だけでこの動作であるという共通認識のもと進めることができます。当然動きの効率化も図れます。


ドリルの意味

各ドリルはそのまま実践(雪上)で行う事が出来るので、陸トレと雪上トレの乖離が最小で済みます。ただしこれらはあくまでも手段に過ぎません。

 各ドリルは実践でそのまま表現することができますが、あくまでも「自身の動きの改善」と「本質的な動きを再構築」することが目的です。そのためにVerをいくつか用意しました。根本的な動作要領は同じで運動要領を変えてます。

 繰り返し行う事でスキーにおける基本動作・基本運動が身に付くようになります。最初は本当にこれらだけの練習で問題ありません。

 そして一通り動きが改善されてきた、ある程度無意識に動きが再現されてきた。という段階になりましたらVerに拘らずに状況・条件に適したスキー運動に持っていく事ができます。


Igeta Ski'll-井桁之スキー術- 指導の考え方(上達の根幹)

多くの指導法(?)は現状を説明(指摘)し、それに対するアドバイスをしている。一見当たり前のようですが、多くの指導者が見落としていることがあります。

 指導は各指導者・コーチが色々な角度からその方に最適なアドバイスを試みていることに間違いはないので、どの指導者・コーチの言っている事、やっていることには間違いはありません。しかし、現状それで上手くいっている人はそう多くはないはずです。

 例えばA先生はこう言っていたのにB先生は全く逆のこと言ってくる。どっちが正しいの?とか、それによって混乱してしまった。という事は良く有る話だと思います。これらはスキーの技術は一つではないという事をわかっていれば然程混乱する事ではありません。
 

 一番の問題はそれらのアドバイスは全て「前提」が有って発せられているという事です。その「前提」が解っていればAもBも理解できるし、自分はどちらが合っているかの選択できます。もっと言えば両方できればご自身の技術の幅は更に広がります。皆さんが思っている多くの「これってどっち?」はほぼ全て無意味です。「どちらも」です。さらに言えばまだ他にもいくつも有るでしょう。という事です。スキー技術は唯一無二のものではないことを先ずは認識ください。
*検定や競技は別です。それぞれ与えられた課題というものが有りますので、それに特化して表現しなければなりませんので。しかしそれでも「前提」の動きができていれば難しく考えることはありません。

 Igeta Ski'll -井桁之スキー術- の指導、言い換えれば Igeta Ski'll のレッスン・講座・指導で得られる事はこの「前提」の部分とお考え下さい。技術は一つではないが、根幹となる動作や運動というものにはジャンルを問わず共通した「身体文法」ともいうべき法則のようなものが有ります。なんでも運動のできる人というのはおおよそそれらが備わっている人と言えます。Igeta Ski'll -井桁之スキー術- ではこれらの共通した動きや動作からアプローチをし、スキー運動にまで昇華させた指導と言えます。

 そのための各ドリルであったりもするのですが、指導の根幹にあるのが今までのご自身のレギュラーな身体の使い方を「運動の本質」からアプローチした「身体の使い方」に変化させることです。これを「運動プログラム」の改善・再構築と言っています。今までの「運動パターン」をアンインストールして新たな「運動パターン」をインストールする、「運動パターン」のアップデートと言ったらわかり易いでしょうか。

 既存の指導は今のご自身の「運動プログラム」のまま枝葉の部分をアドバイスされている状態です。指導者が求める運動プログラム(前提)の元に発せられているアドバイスです。自分がその運動プログラムを持ち合わせていなければ、ご自身の現状のプログラムに変換してやってしまおうとするだけです。そのためいつまで経っても動きは変わらず、同じ事を言われ続けることになってしまうのです。

 そこで指導者はバリエーショントレーニングというもので、その前提となる「動き」を引き出そうとしたりするのですが、そのバリエーショントレーニングすらもその方自身の「運動プログラム」でしか動けないためこれは何のためにやっているの?的な苦行と化してしまいかねません。
 バリエーショントレーニングはその目的がはっきりしている事と、やはりできるできないに関わらず「前提」というものが有るんだという事が解っていなければ意味が有りません。逆に「前提」が解った瞬間にそれらは相互に作用しますので、その後効率よく上達に向かう事ができるでしょう。

自分の感覚が一番大事!(上達の神髄)

一見Igeta Ski'll -井桁之スキー術- は理論重視で感覚は必要ない?と思われがちですが、「感覚」を一番重要視しています。

 Igeta Ski'll -井桁之スキー術- というのは「井桁スキー理論」を体現するための「身体理論」です。よく言われることに「理屈」はわかった!ではどうすれば良いの?という部分ですね。そのどうすれば良いの?の部分が既存の指導法では前述したように、「バリエーショントレーニング」であったり、「前提」をすっ飛ばした現状の説明をしただけのアドバイスであったり、指導者・コーチの経験や感覚であったりするわけです。

 

 Igeta Ski'll -井桁之スキー術- はこれらの感覚の部分を運動科学や解剖学的、バイオメカニクス的に考察して運動の共通点や法則を見出しドリルにまとめたものです。ですから誰でも理解できるようになっています。そして、誰でもそのように動くことは可能なのです。(できるできないはまた別の話です)
 そしてその時に感じる「感覚」は千差万別なのです。要は同じ事をしていても感じ方は様々だという事です。

 しかしその感覚は様々であるのに、自分の感覚をとにかく押し付けて(?)しまう指導者・コーチがたまにいますが、非常にもったいないです。この場合その指導者・コーチは本質(前提)を理屈ではなく感覚でしか理解していない事が原因ですが、まず自身も理屈を学び理解してから、相手にも前提が有る事を理解させた上で自分はこういう感覚だけどね。に留めておくべきです。それ以上の強要は混乱させてしまうかもしれません。
 また受け取る側も指導者・コーチ、デモやプロといった方々の感覚を聞くことも有ると思いますが、本質(前提)を理解していないなら余りお勧めはしません。なぜならそれらは全て「前提」が(意識・無意識にかかわらず)理解出来ている上での「感覚」だからです。厳しいようですが、それ以前にやるべき事があります。
 他人の感覚はあくまで「前提」を理解した上でその求め方を参考にしたい方のみが聞いて、ためになると思います。また「感覚」は上達と共に変化もします。そこも押さえておかないとなりません。

 本題ですが、その「感覚」は個人個人のものです。Igeta Ski'll -井桁之スキー術- ではドリルを基に雪上レッスンも行っていますが、そのドリルをやってみた結果どうだったか?という事を最重要視しています。

 レッスンでは度々「どうでしたか?」と聞くのですが、「上手くできたかどうかわかりません」という回答が一番多いのです。これはあらゆる教育法にまで口を出さなければならなくなるので簡潔に述べますが、「上手くやらなければいけない」を意識的にか無意識にかはわかりませんが、受講者に求めてしまっている指導者側の責任ではないでしょうか?評価法も〇か✖かが多い世の中です。受ける側は常に正しくできる事、ちゃんとできているか?が最優先されているように思います。

 Igeta Ski'll -井桁之スキー術- の指導法及び評価法は違います。その方の「感覚」が最優先です。上手くできたかできないかは初めてやるのに上手くできているわけがありません。そこに焦点を当てるなら全て「できてませんね」「違いますね。そうではないです。」で終わりです。そして一部分だけを指してダメ出しして、そうではありません。と伝えたところでまだ良し悪しも解らない本人は全部ダメだと感じてしまう事が多々あります。そうすると「試行錯誤」からはどんどん遠のき、どうやれば良いか全くわからない状態に陥ってしまいます。最悪この人の言っていることは全くわからない!わかりたくもない!にもなりかねません。当然目的の動作・運動に到達する事も無くなってしまいます。


 「運動プログラム」を変えるのですから、自分が動いた結果を自分で把握(?)し感じなければいけません。動いているのは紛れもない「あなた自身」なのです。それらの動きをしてみた結果スキー板がどう反応したか?どう動こうとしたか?をいちいち「感じ取って」頂きたいのです。ですので上手くいくいかないは二の次です。明らかに違う動きの場合は修正させなければいけませんが、少しでも動きに変化が見られたなら、しばらくは見守ることが必要です。そして、上手くいった時には板もスッと動いてくれます。その時は未熟であってもしっかり評価します。その上で少しずつアドバイスの質を上げていくのが「Igeta Ski'll 的指導法」になります。

 その方の「試行錯誤」が一番の「近道」になると考えています。上手くいった感覚も上手くいかなかった感覚も全て「体験」していただきます。思うような反応が無いのはなぜなのか?自分の感覚と私のアドバイスを自身の動きと照らし合わせて修正していただきます。そしてドリルの精度を上げていく事でいつの間にか色々な悩み・謎・癖等が無くなっていきます。

上達とは?

基本の「運動プログラム」が揃っているか?そして楽しく経験を積む。

 上達はエレベーターに乗って最上階まで連れて行ってもらえるものではありません。自分の脚で階段を上ることが必要です。
 「井桁スキー理論」「Igeta Ski'll」はできるだけ最短で上がれる階段を案内しているに過ぎません。この階段をこの方法で上がればかなり楽に上がれますよ!というに過ぎません。階段を上がるのもその道具(方法)を使うのもあなた自身です。そして、それらの方法や道具が揃っても解ってもその人なりの紆余曲折はあります。ちょうど家を建てる知識も道具も全て備えた!と言っても、果たしてそれで完璧な家がすぐに建てられるか?という事と似ています。あとは経験(練習)が必要になりますね。
 そこで、知識も道具も揃っている人と、何から何まで手を出して何が良いのかもわからなくなり、あの人はこう言ったこの人はこう言ったといちいち他人の言動に振り回されている人とでは、楽しさも数倍差が有る事と思います。

 心に余裕を持って楽しく試行錯誤したいものです。

©2017 Igeta Ski'll 井桁スキー研究会